彼は、顔を赤くしてフェンスに背中を預けると、カシャンという音と共に口を開いた。 「…いや、うん。 朝比奈さんの言うとおり、まだ好きなんだけど…でも、もう無理なんだ」 俯いた彼の顔が激しい太陽に照らされてよく見えなかった。 「どうして無理なの?昨日、柚花ちゃんが私のせい?って言ってたけど…」 あぁ、それね。 彼は軽くそう言うと、空を見上げて目を瞑って黙り込んだ。 「………」 「………俺、さ」 彼の話が始まるのを静かに、静かに聞いたーー 「中学三年の時に柚花と一年付き合ったんだけど…」