掴んでいた手を離して、私は彼に言った。
「それは、そうとね。
昨日の柚花ちゃんのことなんだけど…」
突然、私の口から出た“柚花”の言葉に、彼の肩はピクっと動く。
ーー反応してるのは、きっと彼女が気になるから。
「柊くん、まだ柚花ちゃんのこと好きなんじゃないの?」
「え…いや。好きじゃないよ。フられてもう1年以上経つし」
彼は誤魔化そうと、あははと頭を掻く。
そして、その手が震えていたのを私は見逃さなかった。
「好きなんじゃん!なんで諦めちゃうの?柊くん、こんなにイケメンなんだし、きっとまた振り向いてくれるよ!?」
「……もう、いいんだ」
「良くないよ」
なんで、こんなに必死になっているのか、自分でもよく分からない。
自分が思い立って彼をもさ男からイケメンに変えたから、なんていうか、彼は私。みたいな感覚も確かにあって。
その人が、自分の恋愛に必死になって頑張れないのが嫌だったのかもしれない。


