「朝比奈さん?どこ行くの?」
「人のいないとこ」
廊下を歩いていても、突き刺さる柊くんへの視線。
教室と同様にあちこちから女の子の「かっこいい」という声が聞こえてくる。
お洒落なんて興味ありません。なんて、そんな雰囲気が漂ってるこの学校だけど、やっぱりみんな程々には興味あるんだと確信する。
証拠に、柊くんへの熱視線。
男の子からは「いいな。あんなイケメンで」なんて声も聞こえてくる。
人のいないところなんて、学校にはほとんどないけれど、屋上にはあまり人は来ない。
屋上の扉を開けると、夏の日差しがカンカンに照りつけ、それが肌に突き刺さった。
「はぁー」
少し長い柊くんから出たため息。
それに気付いて振り返ると、彼は真っ赤な顔をしていた。
「ど、どうしたの?」
「いや、恥ずかしかったなぁ、と思って。
朝、いつもの眼鏡で来ようかと思ったんだけど、姉ちゃんがやめろって阻止してさ」
質問責めや、友達からの小さな侮辱より、恥ずかしかったと言った彼はとてもかっこよかった。


