「煩いよ、真衣」

はぁ。と短くため息をついて、読んでいた小難しい小説をパタンと閉じ、
下を向いてたが為にズレた眼鏡を右手の中指でくいっと直すのは、中学時代からの友人の山本 遥。



「だって、ハルちゃん…
イケメンが、誰一人もいないなんて…そんな学校ある!?」

「ある。現に此処にある」


眼鏡を直したその右手の中指をただ下に下ろして“ここ”と、指を差す。



「おかしくない?青春時代だよ!?
みんな恋人とか欲しくないのかなぁ…」

「なんでか教えてあげようか?」

「うん。どうして?」

「こ、こ、が!あのT大現役合格者を毎年何十人と輩出してる名門高校だからだよ!」



そう、日本一とも言われているT大学。
この高校はほとんどがT大学合格に向かって一年の頃からか勉強に励んでいる。


その為にイケメンがいないのだとでも言いたげな遥に「勉強しながらお洒落も出来る!」と叫ぶと「呆れた」と屋上を出て行ってしまった。