“柚花”は、私をチラリと見て、そのまま俯いてしまった。
そして、最後に消え入るような声で呟いた。
「…彼女、いたんだね」
クルリと後ろを振り向いて、去って行く“柚花”
そして、それを追いかけたいと言っている柊くんの足は、証拠にジリッと地面を削る音が聞こえる。
やがて、その音も消えた。
彼を見上げると、悲しそうな顔をして俯いた。
なんだか漫画のワンシーンみたいで、不覚にもドキドキしてしまった。
「ごめんね、朝比奈さん」
「え?」
「変なとこ見られちゃったね」
切なそうに私を見る彼の顔はやっぱりイケメンで。
そして“柚花”のことが詳しく知りたくて、胸が苦しかった。
「あの子、誰?」
私の問いに彼は一瞬俯いて、声をあげた。
「…元カノ……」


