「あ、あの!柊く……」
「大樹!?」
私の声に被せるように、柊くんの下の名前が呼ばれた。
振り返ると、一人の女の子が立っていた。
うちの制服ではなく、近くの女子校の制服だという事はすぐに分かった。
誰だろう…あの柊くんのことを下の名前で呼ぶ人なんているの?
イメチェンをしたのは、ついさっき。
もさ髪、分厚い眼鏡の柊くんを下の名前で呼ぶ…妹さん??
そっと、柊くんの顔を見ると、彼はその子を見て目を見開いてとても驚いていた。
「柚花…」
「大樹…なんか変わったね」
「あぁ。うん…」
「もしかして私のせい?…大樹…」
「いや、柚花のせいじゃないよ」
全く話が見えない。
大樹と呼ぶこの子と、柚花と呼ぶ柊くん。
しんみりとした空気が嫌に肌にささる。


