眼鏡の次は、そのもっさい黒髪。
「ねぇ、柊くん、髪染めたことない?」
「ないけど、染めたいとも思わない」
それなら爽やかに黒髪の短髪が一番だな、と思い、カバンの中から携帯を取り出して行きつけの美容室に電話をかけた。
「あ、朝比奈です。これからお願いしたいんですけど…」
高校入学から月に一度、メンテナンスに行く美容室ももう顔なじみで。
「今は予約入ってないからどうぞ」と、すぐにオーケーしてくれた。
「さ、行こう」
少し抵抗していた彼の腕を強引に引っ張って歩く。
「あの、朝比奈さん。俺、お金…」
優等生らしい発言に思わず笑う。
「あー、いいよ。私が強引にやってることだから」
そんなわけいかないよ。
と、焦る彼の言葉を無視して歩き続けた。


