「まぁ、昔でもゆっくりと思い出せばいいよ。そして、俺をまた君の大切な存在に入れてくれ。」

「大切な…存在…?」

何故だか、この兵士さんを見ても大切だとは思えなかった。

そして、なぜあの夢の人が浮かぶの?

これは私が間違っているんだわ。

きっとそうだわ。

「ああ。それじゃあ、もう俺はここを出るよ。兵士が長く部屋にいたら怪しまれるしね。」

「あ、はい。本当にありがとうございました。」

「うん。それからサンこれを肌身離さず持ってて欲しい。」

彼は私にホイッスルペンダントを手渡す。

「笛…?」

私がそう聞くと彼は頷いた。

「そう。今度またラスフォールに迫られそうになったらそれを吹くんだ。」

「これを吹いたらあなたが来てくれるの?でも主に手を出すのなんか危険なことだわ。」

そう言うと、彼は苦笑した。

「これを吹いたら俺は君のとこへ行くよ。だけど、この笛は俺を呼ぶ笛ではないんだ。」

「呼ぶ笛じゃないの?それじゃあ、何に使うと言うの?」

「この笛は相手を眠りにすぐ落とす笛なんだ。この笛からでる音は少し特別にできているんだ。だからきっと役に立つはずだ。」

「眠りに落とす?殺すわけじゃないよね。」

それを聞いてまた彼は苦笑した。

「俺がサンを殺人犯にするわけないじゃないか。睡眠に落とすだけだよ。でもこれを使ったらすぐに逃げるんだ。いいね。」

私は頷いた。

「わかった。ありがとう、兵士さん。首にかけとくわ。」

「うん。そうして。」

すると、彼はドアの前に移動した。

「俺はもう行くよ。なにかあったら庭の方へいるから呼んで。」

「…うん。ありがとう。」

「それと、今日はラスフォールは屋敷には帰らないから安心して。」

それを聞いて、私は安堵した。

「何から何までありがとう。あなたのこと疑ってごめんなさい。」

「いや、いいんだ。それじゃあね、サン。」

そう言うと、彼は部屋から出て行った。