頑なな態度の僕を見て、父は口を歪めて笑いながら、

「なあ、みずき…

そんなに彼女の事が好きなのか?」

僕はその質問にはっきりとわかるように頷いた。

「そうか…

初めてだよな。お前がそんなに女に惚れるなんて…」

そう言いながら、父は手酌でもう1杯酒を煽る。

「お前がそれほど本気なら…

もう俺達がどんなに反対したって無駄だろう。

ただな、そういう色々な事情のある女性と付き合うことはまだしも、

結婚はそんなに甘いものじゃない」

「わかってます」

「本当にわかっているのか?世間知らずのお前に何がわかるって言うんだ?」

「父さんや母さんみたいに…

幸せになりたいと思います」

空になったグラスを握り締め、

突然テーブルにゴンという大きな音を立てて置く父は…

辛そうだった。

「俺が…

俺たちみたいになりたいのか?お前の目は節穴か?」

「だって、父さんはあんなに愛している母さんと結婚できて、

母さんだって苦労はしたけど、僕達を産むことができて幸せだって、

いつもいつも…」

「それだけで幸せだと思うのか?愛し合えば、一緒にいられたら、

子どもができれば幸せなのか?」

「…」

「お前はうちにある様々な違和感を感じたことはないのか?

そんな色々ある違和感を、訊ねることすらできない臆病者の俺のどこが…

幸せなんだ?」