しばらくそうして、自分の弱い気持ちをごまかしているうちに、彼女と対峙して…

突然妊娠を知らされた。

八方ふさがりになっていた僕にとってそれは一筋の光だと思ったのは一瞬の事。


彼女の口からこぼれ出たのは「得体のしれない男との結果…」だった。


僕のじゃないのか?いったい何が起こっているのかわからなかった。

確かに、途中からそういう関係はなかったけど…

でも彼女が誰かと付き合ってたってことなのか?それも僕と同時並行で…

年末年始に両親を説得するか、それを押し切ってでも

早く彼女に結婚しようとはっきりと伝えればこんな事にはならなかったのか?

優柔不断でどっちつかずの弱い自分がつくづく嫌になった。


それにも増して彼女がその命を命として扱っていないことが…

堕ろそうとしていたことが…

もっと悲しかった。


母が苦しんだ末に僕を産み、のた打ち回る様に心と身体を痛めながら…

慈希を産んだことを知っていた僕にとって、彼女の行動は理解できなかった。

いらない命なんてこの世にはない。




そして、それでも彼女が僕を必要としてくれるのなら僕が父親になればいい。

それでひなさんが安心して産めるなら…

それが僕のひなさんにできることで、いつまでも待たせた贖罪なら…

僕はその時覚悟を決めた。