父は、静かに飲んでいた。久々二人で飲んだ酒は…

ただ味を楽しめる美酒ではなかった。

でも、今この時に、この時だからこそ聞くべきことだったのかもしれない。

その横顔を見ながら、僕はやはり父のようになりたいと思った。

父のように何があっても最期のその時まで…

ひなさんの側にいたいと思う。


結婚は夢物語ではない。

単なる恋愛のゴールでもなく…

それはスタートであり、出発なのだろう。

その道のりは、誰にだってただ甘いわけではない…

苦くしょっぱく、時に絶望したり葛藤したり、そういうものを乗り越える中で

夫婦が、本当の伴侶に…

家族が本当の意味での家族になっていくのだろう…


父の抱えた試練。僕の抱える試練。

それは違いがあっても、愛しいと思う人と共に生き続けていくために必要な事。

これからも色々あるのだろう…

だからこそささやかな日常が、小さな出来事が幸せだと知ることができるのだろうか?

これから僕らを取り巻く世界が少しでも平穏であるように…

父と母が穏やかに暮らしていけますように…

僕はその十字架の重さに、

今はただ祈らずにはおれなかった。

END