父は隣で自分のグラスを引き寄せ、もう一杯酌む。

「父さんピッチ早すぎる…」

「いいんだ。後で吐いても今は飲みたい…」

僕はグラスを握ったままもう飲む気にはならなかった。


しばらくして、父の酒を煽る手が止まった。

「なあ瑞希。突然10歳と8歳の女の子の父親にお前がなれるのか?」

「それは大丈夫だと思う。娘さん達も僕たちの結婚には賛成してくれているし…」

「あのなぁ~。それは彼女達がまだ子どもだからだろう?

これから大人の女性になっていくときお前が義理の父親ということは、

色々引っかかってくるぞ?実父とはどうなんだ?」

「彼女は詳しくは教えてくれないけど、親権も面会権も放棄していて、

今どこにいるのかもわからないって…」

「血のつながらない子どもを自分の子として育てるのは生半可な事じゃない。

お前がこれから生まれる子も彼女達も同じように関われるのか?」

「彼女の子どもなら…

僕は家族として一緒に生きていこうと思ってる」

「そうか…

一度彼女にも、お子さんたちにも会わせて欲しい。

血のつながりは別としてこれが縁で内孫になるんだから…

うちには女の子はいなかったから楽しみだな」

父は静かに微笑んだ。

僕が10歳と8歳の父親になるだけじゃない。

それによって、父と母は突然2人の孫ができることになる。