そういえば、風雅が死んで、無我夢中で会社を作って、営業スマイルは常にしてたけど本当に心から笑うことができたのは、この町に来て玲慈に会ってから。
「風雅は、呪いを残したけど誰よりも、桜さんの幸せを願ってます。それに俺も。俺たちがついてきた桜さんは、いつも堂々として自分の気持ちを真っ直ぐにぶつける人でした。だから俺たちは付いてきたんです。」
...いつの間にか、忘れていたのかもしれない、いや。怖かったのかもしれない
社会にでて、たくさんの壁にぶち当たって。
真正面からぶつかっても跳ね返されたり、うまくいかなくて一歩が怖くなったり
そうやって過ごしていくうちに、大切なものを見失ってしまっていたのかもしれない
信じて裏切られて、そんな毎日を繰り返すうちに身を守ることだけ上手くなっていた。
「...ごめんね。あたし見失ってたのかもしれない。...竜樹あたし伝えたい、この気持ち」
「はい。伝えてください」
そういわれ、あたしは、電話を切り財布と携帯だけもって飛び出した。
耳には、玲慈からもらったピアスが輝いている。


