お店をでて、用事も終わったあたしたちは家に向かって歩いていた。
「もー。せっかく話してたのに」
「...なに?俺邪魔だった?」
少し膨れた玲慈がかわいくて意地悪なことを言ってしまった。
「別に?なんかいいもの買えた?」
「...。」
ありゃ。
拗ねちゃった。
「ごめんごめん、拗ねないッ--グイッ」
--ポスッ
「...え?」
腕を引かれたかと思えば、何かに包まれた。
鼻を掠めるのは、玲慈のきつすぎない香水の匂い
抱きしめられたと気づくには、少し時間がかかった。
「...なぁ、桜の心にいるのは誰?俺じゃ代わりにはなれない?」
「...れ、いじ?」
いつもの甘えた声でもなく、総長としての威厳のある声でもない
弱弱しくいまにも消えてしまいそうな声
「な、なに?どうしたの?」
「...本当は!ほんとうは、ちゃんと桜が前に進めることができて、その時をそばで見守れたらいいなって思ってた。伝えるつもりなんてなかった。...でも、もう無理だ、溢れて止められねー。」
「...れい、「俺、桜が好きだ。」
玲慈の声は、はっきりとあたしの鼓膜を揺らした。
「お前が好きだ!誰にも渡したくない」


