支配人との交渉も終わり、個室を出て、フロアにあるガラスケースをみてた。
「坂上様」
ふと、さっきの支配人に話しかけられた。
「はい?」
「さっきは、お買い上げありがとうございます。」
「いえ。こちらこそ無理を言ってしまってすみません」
「そんなことありません、ただ当店始まって以来の大仕事になるだけです」
思わず笑みがこぼれてしまった。
「誠に失礼ながら、あちらの男性は彼氏様ですか?」
そういった目線の先には、何やら店員さんと話をしている玲慈の姿があった。
「...いいえ。彼氏ではありません」
「そうですか、しかし、大切な人なのでしょうね?」
「...なんでですか?」
「気づいていらっしゃらないかもしれませんが、あの店員と話している姿を見て少し、むっとされましたから」
「...そんなこと、してません」
「認めたくないんですか?」
「...。」
「失礼を承知で申します。...認めてしまったほうがよろしいのでは?その耳についているピアスの石はおそらくムーンストーン、それを買って行かれた方を私は知っています。」
え?
この石は、風雅があたしにくれたもの
「しかし、ご不孝があったと聞きました。
ムーンストーンの石言葉は、永遠の愛だから俺の大切な人に贈ると言っていました。しかし、この石にはもう一つ意味があります。」
もう一つの意味?
「なんですか?」
「変わりゆく心という意味です。月が満ちて欠けるように、心は変わるという意味もあります。もしかしたら、坂上様の心は、進み始めているのではないですか?そして、きっと彼もそう望んでいるのではないでしょうか」
...変わりゆく心


