一向に玲慈は話かけてはくれない、むしろ目すら合わない
「花火まで時間あるけど、どーする?」
「屋台回りながら、いつもの場所行こうよ!」
京介と美鈴が話ながら先頭を切って歩いて行ってしまった。
後に続くようにみんなも歩き始めた。
・・・獣王ってやっぱすごい、だって。
「お!獣王のあんちゃん達ここのリンゴ飴h最高に美味しいよ!」
「いやいや、こっちの唐揚げの方がうめーぞ」
行く先々で声をかけられる。
ふと、わたあめ屋さんの前で立ち止まったあたし
『・・・ほら、桜はわたあめが一番好きだよな、あ、一番好きなのは俺か』
懐かしいな、そうやってチャラけて一つ買ってくれたんだよね
「・・くら、桜!」
「!?」
気づけば、すぐ隣に玲慈がいた
「な、なに?」
「いや、さっきからぼーっとしてるから、わたあめ好きなのか?」
「え?あぁ、好きよ?」
言い終わる前に玲慈は、屋台のおじさんと話をしていた。
――ズイッ
目の前にはかわいいキャラクターがプリントされたわたあめの袋
「くれるの?」
「当たり前だろ?桜に買ったんだだから受け取って?」
「ありがとう」
「・・・あと。浴衣似合ってる」
わたあめを受け取ったあたしの耳にとっても小さな玲慈の声が届いた。
すぐに、ぷいっと顔をそらしてしまったけど、耳まで真っ赤だったのを見逃しはしなかった。


