「桜ちゃーん」
花火の側には京介がいた
「京介は花火しないの?」
「ん?俺は見てるー線香花火はあとでするよーだから今は花火配ってるのーほっとくと銀太が全部やっちゃうから、やれない人がいたら可哀想でしょ?」
「そっか、あたしにも花火頂戴!」
「はい!」
京介から花火を貰って
ろうそくで火をつける
「京介!あたし一本やったら交代するよ?」
「んーん。大丈夫桜ちゃんは楽しんでー」
うーん
あたしだけ?
あ、もう花火終わっちゃった。
終わったけど京介の横に座る
「桜ちゃんもうやらないの?」
「ん。こうやって見てるのも楽しいからいいの」
「・・・優しいんだね」
「なにか言った?」
「なにもー?」
だって本当にみてるのも楽しい
花火で誰かを追いかけてる人
初めてやる花火に少し怯えてる人
興奮してる人
振り回してる人
みんなそれぞれに楽しんでいて
子供のように目が輝いてる
「・・・この瞬間ってさー花火だよねー」
「・・・それ、あたしも思った」
「わー桜ちゃんと以心伝心ー」
そう。
例えるなら花火
これから先の長い人生からしたら今日この日は一瞬の輝き
思い出すかもわからない
もしかしたら長い時間の中で忘れてしまうかもしれない時間
「そうだ!ちょっと待ってて」
京介が急に立ち上がって倉庫に消えて行った


