「早くー、急がないとご飯食べるだけで休み時間終わっちゃう!」


「はいはい。分かってるって」



その日は四限が移動教室で、葵と俺は少し急ぎめに屋上に向かっていた。


二年になってからの俺達は、晴れている日は屋上の一角で昼飯を食べる事が多くなってきていた。


そしてそれは今日も…



あいつ等のことだ、二人とも食べずに待ってんだろうな。



そう思うと余計足早になる。


屋上への階段を上がっていくと、開け放たれた扉から明とちとせの話し声が聞こえてきた。



「好きなんだ、ちとせのこと」



その言葉に思わず立ち止まる。


その声は間違いなく明のもので。


明がちとせを…好き?


驚きのあまりその場で固まる。


それは葵も同様で、俺より二段ほど上に立ったまま動こうとしない。


俺からは背中しか見えず、葵がその時どんな顔をしているのか伺うことは出来なかった。


息を潜めるように立ち尽くす俺達の耳に、二人の会話が続けざまに入ってくる。


ぐわりと沸き上がる感情。


この気持ちは一体…


答えはすぐそこに見えそうになっているが、それを知ってしまうのを俺は拒絶してしまった。