「おはよー、お二人さん」



そんな中、ちとせが手を挙げながらこちらへと歩いてくる。


タイミングの悪い登場に俺の胸がバクバクとうるさい。



「ちとせぇ…クラス離れちゃってるよ、さみしいよ~」


「えっ?」



葵の言葉に反応し、俺達の横に来たちとせは上を見上げた。


苦しそうにちとせの目が細まる。


でもそれはほんの一瞬のことで、すぐに葵へ残念そうな顔を向けていた。



「二人と違うクラスなんてショック過ぎるー! でもでも、お昼とかはまた集まって食べよ、ね!」



葵の手を握るちとせ。


問いかけたその表情はまるでぱっと花が咲いたような、そんな笑顔で…


こんな顔をされて『NO』と言える奴はいるんだろうか?


周りを見渡すとちとせの笑顔に見とれている生徒がちらほら伺える。


男ならまだしも女までも…



だからほっとけないんだよなぁ、全く。


無意識のうちに人を虜にしてしまう女、それがちとせという奴だ。



今まで何人の男どもがちとせに告って散っていったか、


憧れの存在でもあるちとせと親友の関係でいる。


それが俺達三人には気分が良かったりもして…


でもそれと同時に、俺にとって悩みの種になりつつもあった。