「やっぱ良いや。無理強いはしたくないしね?」



先輩の大きな手があたしの頭に優しく触れる。


そのしぐさが安心を与えてくれると共に、胸が締め付けられるような感覚を呼び起こす。



「ごめん、なさい…」



申し訳ないと思いつつも、自分が忘れてしまいたい想いを他の人に知られたくない。


本当、つくづくあたしは頑固だ。



「謝ることないよ。でも…辛くなったら言いなよ?」


「…はい」



あたしはコクりと頷くと、先輩と二人で笑いあった。


だけど笑顔とは裏腹に心は荒れ狂う。


辛いかどうかと言うのなら、もうすでに辛い。


前にも後ろにも動けない苦しい状況で…


ううん、動こうともしていないのかもね?


諦めようと決めた。


でもそれからの方が悠斗に対する好きって気持ちがこんなにも大きいんだって…


改めて思い知らされてしまった。


バカだよね? 結果が分かりきった敵わない恋なのに。



『好きだよ』



この一言を、言うのさえ許されない。