普段からニコニコしてるような人からは想像出来ないような、挑発的な笑み。



一体何なんだよ…



先輩の意図が読めず、さっきより眉間に皺が寄る。


しかしそれは一瞬の間に消え去り、今度はちとせへと視線を落とした。



その瞬間、教室の奴らが息を呑んだのが分かった。



ちとせに向けられたのは、さっきのとは全く違うの先輩の笑顔で…


それはまるで、愛しい者に向けられるような。



ちとせはどんな顔をしているんだろうか?


背を向けているちとせを伺い知ることは出来なくて…



「先輩、ちょっと」



ちとせはそう言うと、先輩の腕を掴んで教室を出ていこうとする。



途端に俺の中に込み上げる黒い感情。


昨日も感じたそれに混乱する。



何も考えずにこのまま引き止めてしまいたい。


でも理性的な自分がそんなのを許すはずもなくて、去っていく二人をただ見ているだけだった。