「あぁ、あたしのなけなしのお金が」
そんな冗談を言いながら、自分用に買ってきた飲み物に口をつける。
「いや、バイトしてるお前の方が絶対持ってるから!」
ポケットに入れていた彼自身の財布の中身を見ると、明がそう嘆く。
それに同意するかのように周りに座るクラスメイトも頷いていた。
あたしの通う高校は結構お堅くて、基本的にバイトは禁止。
その上必ず部活に籍を置いていなければならないという徹底ぶりだ。
でもどうしても働きたかったあたしは、担任の弥生さんに相談して…
あたしの真剣な気持ちを摘み取ってくれた弥生さんは、校長や他の先生達に掛け合ってくれた。
本当、弥生さんには頭が上がらない。
結果的には渋々了承してはもらえたのだけど、これにはある条件があった。
それは、今の学力を落とさないこと。
あたしは親の残してくれたお金を少しでも使わないようにしようとしている。
だから、この学校へは特待生制度を利用する為に入学したのだった。