「やめろ!」


立ち上がった康太が力任せに実里の腕を掴み引き寄せる。


小さな実里はいとも簡単に康太の腕の中に収まる。


「やめろ、俺の目の前で…他の男にすがるな…!」


折れそうなほどキツく抱きしめられる。

腕の力が強まる。


「康太が…したことと同じよ…」


背中に腕を回す。


「辛かった…ミノリのお父さんに別れろって言われて…ミノリは会いたくない、会っても触れさせてくれない、抱かせてくれない…気が狂いそうだったんだ!」

そんなの、言ってくれなきゃわかんないよ…。
いつだって康太は平気そうな顔をしてたじゃない…。


「ミノリが平気そうな顔をしてるの見て、我慢出来なくて…。ごめん、飲み屋の女の子と仲良くなって…初めて出かけたとこだったんだ。
何にもなかったから、それだけは信じてくれ。」


「大嫌い。」


そう言葉にしてから、康太の唇に口付けた。

精一杯の背伸びをして。



「言ってくれなきゃわかんない。
あたしだって康太が欲しかった。でも、反対されて疲れきった表情の康太を見たら、言えなかった…。」


…やっぱりあたしじゃダメなのかなってずっと思っていたから。


「ミノリ、俺は」
「でも同じよね。あたしも言わなかったから康太に伝わらなかった。

愛してるの。


康太だけよ。ずっと、ずっと。」


浮気しようとしたのは許せなかった。

でも、それよりも。

愛してるの気持ちの方が優っていた。



「お父さんから反対されてもいい。
康太が好き。離れたくないよ。」


あの日。


河川敷で再開した時から。


離れないと決めたから。


「ミノリ、結婚しよう。」

康太の口から零れた心。

うん、と頷く。


「もう離さないからな、覚悟しとけよ。」


「どの口が言うかな。浮気男が。」


頬をつねってから笑う。


「雨降って地固まるかな。

浮気男が浮気したら、いつでもおいで。」


関家の存在を忘れていた2人は真っ赤になると、身体を離した。