鼻をさすりながら、涙が目に浮かぶのを抑える。



「なんなの」


「森宮、そこの野球部を詳しく知ってるか?」


「ある程度…」



俺、そこのレギュラーだったんだよね。


記憶喪失ってことにしてあるからすぐに辞めたけど、この体は野球を覚えてる。



「なら、その野球部に――森宮がいたことも?」



ゴクリと唾を飲む。


まさか知ってって近づいたってこと?



「同姓じゃない?」



少し声が震える。けれど嘘じゃない。俺は俺だけど俺は私でもあるんだから。



「いいや。華奢な森宮は俺の気は…」



ドンと壁側に追い込まれる。


嘘だろーーーー!!!!



「ちゃんと答えて」



いやいやいや!!!


違う違う!説得の仕方が違いますよー!



「ひ、柊、くん?」


「俺、前から」



ここの世界はあの世界とは違うのーー!!??