楽しさと奇妙さ、恐ろしさを兼ね備えたひび割れランプ通りは好奇心旺盛なセブンの興味を掻き立てるには十分すぎる位であった。


 カトリの予想通り、セブンはむりやり店にを招き入れようとした人形を殴り飛ばし、

 店主が怒って出てきて逃げ出していた最中だった。

 
 セブンの興味を一番そそったのは小さな店であった。

 両隣を大きな店に挟まれ、他の店にあるような怪しい飾りはなくひっそりと建っている。

 
 一見すれば店でも無いようにも見えるその壁にはツタと苔で覆われた小さな看板だけが付いていた。


「暗くて長い、細くて狭い店」

 
 面白そうだと思ったセブンは何も考えず、扉を開く。

 店というよりはトンネルのようであった。

 店内は薄暗く、滑らかな傾斜でズーッと地下に続いていた。

 
 両壁にぎっしり古めかしい商品が積み上げられ、天井には等間隔で蝋燭ランプが吊るされている。


 店の奥は暗くて見えず、子供二人がやっと通れるほどの狭さで道は続いている。

 
 セブンは恐る恐る店の奥、地下ヘと歩いていった。

 暫く歩くと正面にランプでは無い明かりが見える。

 それに照らされた者を見てセブンは驚いた。

 
 椅子に座って書き物をしているのはドラゴニュートであった。

セブン
「ドラゴンだ!」

ドラゴニュート
「違う、ドラゴニュートだ。

 ドラゴンに近い種族。

 ドラゴニュートのケイロンと言う」


セブン
「僕はセブン、おはようございます」


ケイロン
「……宜しくセブン、いまはこんにちわだがね」


セブン「ここは?」

ケイロン
「看板に書いてあっただろ?お店だよ」

セブン「おすすめは?」

 言ったとたんにセブンの横の商品が崩れ襲いかかった。

 
 いくつもの本がセブンの頭を打ち付け、最後に帽子がうまい事セブンに乗っかった。


ケイロン
「おすすめはそれじゃな、ここは他の店と違う。

 商品が客を選ぶ」

 セブンの頭に乗ったのは埃だらけの古ぼけた帽子であった。