ピエロは大戦以前セブンと魔法都市から西の関所へと向かっていた。

 「鍛えて欲しい」

 
 だが、その時セブンはもう既に自分よりも力があったのは明白であった。

 
 それでも懇願する初めての心からの友に応えるべく彼は心を鬼にしてセブンを鍛え上げていた。


 トリートと出会ったピエロの心中は穏やかなものだった。

 
 ウルブス亡き今、彼にならセブンを任せる事が出来る。

 
 そしてピエロは以前から考えていた行動を起こす時だと考えた。

 
 それは華國王の思惑も、トリートの想像も、セブンの期待をも越える為の試練であった。


 この時、ピエロはセブンに暫しの別れを告げた。

 
 その反応は意外なものだった。


 何時ものように寂しそうに、そして反対したセブンはしっかりとピエロの目を見つめ、

 しかし、力強く同意したのだ。

「ふーん、止めないのかい?」


「いつも止めてたけど、絶対帰って来たから。

 それに約束したろ?友達は助け合うって」


「なんだ。寂しくはないのかい?」

「そりゃ一緒にいて欲しいよ。

 家族意外で一番古い付き合いじゃないか」

 
 そういうと前までは泣き虫だった少年は懐から小さい木製のネズミを取り出した。

 
 色褪せてはいるが道化のように塗られている。


「ねえ、ピエロン覚えてる?

 何時も一緒だったんだ」


「トリート、彼を頼む。頼んだぞ」

 
 ピエロはその時初めて成人になってから人前で涙を流した。

 そして彼は目を細め、南を目指す。


「ピエロ!死なないで!」


「死なないよ、道化はただ踊るだけさ」

 
 今まで、ピエロが自分を連れず仕事に向かう度にセブンはその台詞を言っていた。

 
 いつもは「さあ、どうかな」だったのに。


 セブンは木のネズミを握りしめ、

 ピエロは鞄を担いでその場を陽気に去って行った。