謁見の間

 華國を統治する王がそこにいた。

 華森の王鹿

 ブレイブリー・ロイヤル・スタッグ


 
 第一次南北戦争中に「華森の王鹿」という王位称号を継ぎ、

 二度に渡り停戦を申し込んだ平和主義の王であった。


 三つ名を持つ貴族の殆どが魔法使いであるが、

 ロイヤル・スタッグ王族は厳密には魔法使いの一族では無かった。



 魔力は無いが、しかし王族には不思議な能力を持っている者がいた。


 人物を見定める力。


 「選定眼」と呼ばれるそれは賢者の目に似てはいるが、実際には肌で感じとるというものであるそうだ。

   
 王座の後ろには寒冷の季節だというのに桜華の樹が花を咲かせている。


 代々、花の妖精に愛された王の為に妖精が咲かせ続けているそうだ。


 王の回りには慌ただしく文武官達が王に報告をあげていた。


 騒々しいまでに人が溢れ、その人混みを掻き分け赤い絨毯をセブン達は進む。

 
 リンスに連れられ王の前まで来るとそこにはクラッシュもいた。


 セブン達に気づいたクラッシュは王に目配せを送る。


ブレイブリー
「待っていた。

 ウルブス、お互い老いたな」


 四人はひざまずき頭を下げる。


ウルブス
「しかし、猛ってはおります」

ブレイブリー
「変わらず、頼もしい限りだ。

 今しがたケイロンの書簡を受け取り、皆の意見を聞いておった所だ。


 その青年。

 ウルブス、旧知の友として聞くが、お前はどう思う?」


 王は鋭い目でセブンを見据えた。

 
 セブンは自分の事を言われている事に驚いた様子だった。


ウルブス
「選定眼をお持ちなら既にお分かりでは?

 私は残り少ない命、この錆び付いた腕で彼の剣となる事を決めました」


ブレイブリー
「だろうな、私も彼から感じる。

 多くをな…。

 ケイロンもクラッシュもそうだったのだろう。

 リンス、お前はどうだ?」


リンス
「我が戦友の事ですか?」


ブレイブリー
「ふふ、既に友となったか。

 ではセブン、お前に問おう。

 面をあげよ」


 セブンは顔を上げ、堂々と王を見直した。