「初めてのオペも成功。
完璧な手術だった。

オレはさらに自信をつけた。」

自慢話はウンザリだ。
俺は…そんな光ある話、聞きたくない。

「初オペの患者は8歳の女の子で、Bettyとい子だ。
胃潰瘍だった。
それをオレが治した1年後、彼女はまた病院にやってきた。

病名は胃ガン。
それも、末期だった。

身体のあちこちに転移して、既に手遅れだったんだ。

…胃潰瘍をオペしたときに、既にガンはあった。
それをオレは見逃した。

Bettyの親にさんざん恨み言を言われたあげくBettyにも恨まれて、そのままオレを憎みながらその子は死んでいったよ。

あの目は忘れられないなー…

オレがその子を殺した。
自分の力を過信しすぎて、それでオレは1人の人間を殺したんだよ、佐藤。」

それ、何年前の話だよ。
何年引きずってんだよ。

芹沢の顔から、今でも後悔と罪悪感にさいなまれてるって気付いた。

俺より…ずっと、つらい思いしてんじゃん。
殴られるより蹴られるよりずっと痛い思いを、何年も。

俺は、この世で一番辛いのは俺だと悲観してばかりで────…


本当の大馬鹿野郎は、俺だ。