雄平が、何やら熱心に話している。
クラスメイトの誰が馬鹿をやったとか、そんな話。
あたしはただ生返事をしながら、楽しげな横顔を見ていた。
雄平が中学生の頃にモテていたことは知っている。
高校生になった今も、たぶん。
美菜も雄平のことを、“結構人気がある子”と言っていた。
あたしという彼女の存在があるから表立って騒がれないだけで、密かに想っている人はいるのかもしれない。
そんな人だ、これまでに何もないという方が不思議なのだ。
考えたことがなかったせいだ。
あまりに不意打ちだったせいだ。
過去にあったことを妬んでも、どうしようもない。
それくらいわかっている。
だから、立ち直れないなんてことはない。
焼けつくようなこの痛みも、じきに消える。
そう信じていないと、耐えられない。