「昨日の放課後、聞いちゃったんだもん。男子が何人か教室集まってて。隣のクラスの菊地君が、この中で童貞は俺だけかよーって言ってて」
「その中に、雄平もいた……?」
「うん」
足元が、崩れていく気がした。
何、それ。
どういうこと。
雄平は、経験があって、そして、その相手は、
「あたしじゃないよ」
あたし以外の、誰かだ。
美菜が呆けたように口を開ける。
「……へ?」
「あたし達、まだ、キスもしてないのに」
「はぁ!?マジで?」
美菜は心底驚いた顔をして見せたあと、あっと口をつぐんだ。
「……あたし、何かまずいこと、言っちゃった……?」
上目遣いに見てくる美菜に、あたしは力なく笑い、
「うん、そうみたい」
そう呟くことしかできなかった。