「ははっ。ばーか」
眉を下げて、目を細める。
ばか、なんて言いながら、とびきりに優しい笑顔だ。
からかうように肩をぶつけてきて、あたしの胸が小さく跳ねる。
それはとても心地良い感覚だ。
くすぐったくて、温かな気持ちが、胸の中にじんわりと広がる。
「友達できたよ。美菜って子が、出席番号が一つ後で、声かけてくれたの」
新しいクラスで、つまり高校に入ってから初めてできた友達は、浦沢美菜という女の子だ。
人なつっこい性格で、明るい声があたしの緊張をほぐしてくれた。
小柄で女の子らしく、中学時代の親友である宮下香織を思い出させる。
そして、新しい友達はもう一人。
「それから、鈴音って子」
美菜と友達になることは、藤塚鈴音とも友達になるということだった。
彼女達は同じ中学校の出身で、当時から親友同士だったのだという。