数日後、事件は起こる。


「杏奈ってばぁ。水くさいよ?」


登校するなり、自分の席に座っていたあたしの肩に、美菜が体ごとのしかかる。


「美菜、重い」

「吐くまでどかないよぉ」

「だから、何が?」


そう聞くと、美菜はあたしの耳に口を寄せて、言った。


「エッチしたんでしょ、彼氏と」


……は?


「何それ……ていうか、なんでいきなりそんなこと」


まるで、誰かに聞いてきたような口振りに、胸の中がざわざわと波立つ。


「もー!とぼける気?」

「だから、何で?」


口調がきつくなってしまう。

美菜が少しひるんだ。

もたれていた体をよけて、口を尖らせる。