「伊田ちゃんの彼氏って、超奥手?」
「いえ……たぶん、わりと積極的な方だと……」
動転しているせいで、東郷先輩の問いに反射的に答えてしまっている。
お願いだから、これ以上、何か聞いたりしないで。
余計なことまで口にしてしまいそうで、怖い。
「それなのに、体は求めないの?」
「……まだ、一度も」
ふうん、と言って、先輩は不敵に笑う。
「伊田ちゃんが“初めて”だから、大事にしてくれてるのかもねぇ」
それはつまり、あたしが処女だから、雄平は我慢してくれているということ?
そんな……そんなの、たぶん、うれしくない。
よくわからないけど、たぶん。
大事にしてくれているというなら、それはうれしい。
けれどそれによって、雄平が我慢しているのなら、うれしいはずがない。
だから結果的に、あたしは、うれしくないんだ。



