「ここ一応、進学校よ?」
確かに、あたし達が通う北高校は、この辺りではトップクラスの進学校だ。
大学進学率も90%を上回る。
けれど先輩は、残りの10%のような気がしていた。
ただ、漠然と。
「俺が就職するように見える?」
「ホストとか。愛人とか」
「ぶはっ!伊田ちゃん、俺のことよくわかってるねぇ」
だって、他に何があるだろう。ないよ。
本を棚に戻したところで、ふと視線を感じて顔を向けると、東郷先輩がニコニコしながらあたしを見ていた。
「……何ですか」
「伊田ちゃん、今日は優しいね」
え、と思った。
別に、普通だけど。
むしろ、毒舌は健在ですけど。散々ひどいこと言ってますけど。