翌日も昼休みに、東郷先輩に会った。
けれど今日は、本当にばったりという感じで、しかも、とても意外な場所で。
「伊田ちゃん!」
あたしを見るなり笑顔を見せてくれた先輩の手には、東郷先輩には一番似合わない“赤本”。
大学入試の過去問が載っているものだ。
それはつまり、東郷先輩が大学受験をするということだ。
そしてここは、進路指導室。
大学関係の資料が揃っていて、あたしも一年生ながら利用することが多い。
「先輩、受験するんですね」
借りていた大学の情報誌の返却手続きをしながら、尋ねる。
あたしと東郷先輩の他に人はおらず、声をひそめる必要もなかった。
「意外です、って顔に書いてあるよ」
先輩は楽しげに言うけれど、まさにその通りだ。
だって、勉強なんてしている姿が、全く想像できない。