「……うん」
すぐに自信が湧いてくるわけではないけれど、今までより、自分のことを好きになれそうな気がした。
雄平が好きだと言ってくれる自分を、認めてあげよう。
少しずつ、時間がかかるかもしれないけれど。
あたしだって、自分を好きになりたいから。
本当なら、自分が一番愛してあげなければいけないんだ。
それを、あたしは否定してばかりだった。
そんなことで、自信なんて持てるはずもない。
好きになろう。
雄平が好きになってくれた、“伊田杏奈”を。
この日は、駅までの道のりも、電車の中でも、ずっと手を繋いでいた。
雄平の手は大きくて、あたたかくて、あたしは、夢心地だった。
あたしはいったい、何を見ていたのだろう。
雄平が心の奥にしまっているものに、気付けなかった。



