朝早いおかげで満員とまでいかない電車に乗り込み、両脇に延びる長いシートに横並びで座る。
「杏奈、友達できた?」
高校に入学して早一ヶ月。
クラスが離れてしまったあたしを、雄平は気にしてくれているのだけれど、その問いかけに、あたしは妙な懐かしさを覚えた。
「なんか今の、デジャヴかも」
既視感……実際は一度も体験したことがないのに、既にどこかで体験したことのように感じること。
そんな感覚に襲われ、あたしは半ば興奮気味にそう言った。
けれど雄平はプッと吹き出す。
「いや、それ、まぎれもなく現実だから。一年前にも同じこと聞いたから」
「えっ」
言われてみれば、その通りだ。
あたしは中学三年生の時、クラスに始めは馴染むことができなかった。
中学校の三年間とも同じクラスだった雄平は、それを心配してか、からかってか、あの時確かに、あたしにそう聞いたのだ。