一階の売店の横には自動販売機が設置されていて、その前にささやかなベンチがある。
しかし雄平はそこへは座らず、飲み物を二本買った後、階段に座った。
あたしにミルク入りのコーヒーを渡し、自分はブラックコーヒーのプルトップを開ける。
「なんか、懐かしいな」
「え……?」
「前のバレンタインも、こんな感じじゃなかった?」
そういえば、そうだ。
雄平を呼び出して、こんなふうに自動販売機で雄平が飲み物を買って。
あたしがブラックを飲めないのを知っていてくれて、ミルク入りのものを買ってくれた。
そして並んで階段に座り、あたしは勇気を振り絞って、雄平にチョコを渡したんだ。



