ため息をついて、机の上の辞書をにらむ。

その時、気が付いた。

背表紙の内側に、何か紙が挟まっている。

裏返して、背表紙をめくる。

そして、目を見開いた。

そこには、正方形の小さな付箋が貼られていた。

そして、一つのメッセージ。


『伊田ちゃん ありがとー 愛してるよ☆』

「は……」


呆れて物も言えないとは、このことか。

あたしはがっくりと肩を落とし、静かに背表紙を閉じた。

と同時に、再び背表紙を開き、付箋を乱暴にはがして握りつぶす。

雄平に貸さなくてよかったと、心底思った。

こんなものを見られたら、言い訳なんて聞き入れられるわけがない。

東郷歩……!

彼は史上最悪の危険人物だ。

二度と口を聞くものかと、あたしは強く誓った。