その後の授業は、放課後まで通して全部、当然のごとく集中できなかった。

雄平が怒っているから、あたしが悪いことをしたような気になっているけれど、はたしてそれが全てなのだろうか。

事の起こりは、東郷先輩に辞書を貸したこと。

それ自体は悪いことではないはずだ。

三年生の先輩がわざわざ一年生に物を借りにくるなんていうのがまずおかしいけれど、それでも、自分を頼って来た人を突っぱねるなんてことはできない。

ただ、やきもちを妬かせるようなことをしたのは、悪いと思う。

でも、これは不可抗力だったのだ。

怒りの矛先は東郷先輩に向かう。

東郷先輩が来なければこんなことにはならなかった。

雄平に嫌な思いをさせて、気まずくなるなんてこともなかった。

つまり、諸悪の根源は東郷先輩なのだ。