「ほんとだもん!ていうか今、見てたんなら声かけてくれたっていいじゃん!一人で三年生の教室に行くの、心細かったのに!」

「仲良く話してただろ。楽しそうに。よかったじゃん、“あの”東郷先輩と仲良くなれて」


その言い方に、キレた。


「雄平だって鳴海先輩と仲良くしてるじゃん!!」


雄平が、一瞬固まった。

その様子に、あたしの方が怯んだ。

何?

やっぱり、“同級生のお姉さんの友達”以上の何かがあるの?

チャイムが鳴る。


「……後で話そう」


あたしは、小脇に抱えた辞書の存在を思い出す。

そもそも、雄平に貸すために、東郷先輩から返してもらったものだった。


「これ……」

「いいよ。なんか、しゃくだし」


物に罪はないのに。

でも、これ以上怒る気力はなかった。