鳴海先輩はニコッと笑うけれど、少し申し訳ない気持ちになる。
だって、ちゃんと知ったのは最近だから。
先輩は、あたしのフルネームまで知っていてくれたのに。
「誰か探してるの?」
先輩がそう聞いてくれるので、あたしは甘えることにした。
「東郷先輩って、何組ですか?」
「歩ちゃん?E組だよ。あたしと同じ」
自分を指差して得意気に言う様子は、先輩ながらかわいくて、不覚にも胸がときめいてしまった。
「行こっ」と手を引かれるから、そのままついて行くしかなかった。
相変わらず、不躾な視線は浴びたまま。
もしかしたら、鳴海先輩を見ているのかもしれないけれど。
あたしの視線より低い位置で、艶やかな髪が揺れる。
ふんわりと甘い匂いが漂ってきて、またドキドキしてしまった。



