東郷先輩が何組かわからないことに気付いたけれど、教室を片っ端から覗いていけばいい。
三年生の教室が並ぶ二階に辿り着き、ジロジロと遠慮のない視線を浴びながら、廊下を進む。
一年生が三年生の階にいるのが珍しいのはわかるけど、そんなにあからさまに見なくてもいいのに。
「あれぇ?伊田杏奈ちゃんだよねぇ」
二つ目の教室を覗いたところで、後ろから声をかけられた。
かわいらしく間延びした女の人の声。
三年生に、知り合いはいないのに。
振り返って、さらに驚く。
ゆったり巻いた艶やかな栗色の髪、色白で小さな顔に、少し釣り上った大きな目。
すっと高い鼻に、ふっくらした小さな唇。
超絶美人の、魔性の女。
「鳴海先輩……」
「あ、知っててくれたの?うれしい。中学も一緒だったもんねぇ」



