「三年の東郷歩さん。同じ中学だったの」
ということは、美菜も知っているということか。
でも、そうでなくとも、美菜は彼のことを把握していそうだ。
横顔だけでも、彼が美形であることは明らかだ。
美菜ほど、学校内の美男子に精通している者はいない。
要はミーハーなのだ。
「美男美女のカップルだね」
少し弾んだあたしの声に、しかし鈴音は思わしくない反応。
「付き合ってるかはわからないよ。東郷先輩、特定の彼女作らないことで有名だから」
「え、そうなの?」
今度は、あからさまに声が沈んだ。
鈴音はため息混じりに言う。
「中学の時からすっっっごくモテてたのに」
「強調するね」
いつも物静かな鈴音の、この物言いに、思わず口を挟む。
「あはは。だってかっこいいのは間違いないから」
鈴音は照れくさそうに笑う。
どうやら彼女も、東郷先輩の一ファンらしい。