「わかってます」


その言葉を待っていたかのように、先輩の右手があたしの頬に触れ、そっと手のひらで包んだ。

あたしは一度、目を閉じて、その感触を確かめる。

この手のひらも、じきに馴染む。

大丈夫。消える。

あの温もりは、先輩が消してくれる。


「だから先輩」


先輩に手を伸ばし、けれど手を握る勇気はなくて、シャツの裾をきゅっと握る。

そして綺麗な茶色の目を見つめ、それを視界に閉じ込めるように、まぶたを下ろす。

言葉の代わりに、あたしはただ、目を閉じた。