悶々としたまま、数日が過ぎた。
昼休みに鈴音に付き合って図書室に来ていたのだけど、本棚を物色する気にもなれず、窓の手すりにもたれて外を見ていた。
三階のこの場所からは、コの字になった校舎に囲まれている中庭の様子が、よく見える。
いくつかのベンチや石塀に腰掛けて、お弁当を広げている人や、おしゃべりに花を咲かせている人達でにぎわっている。
初夏の陽気の中、気持ちが良さそうだ。
ふと、一組のカップルに視線が止まる。
「あれ、鳴海先輩だね」
ふいに耳元で聞こえた声に、肩が小さく跳ねる。
振り返ると、数冊の本を小脇に抱えた鈴音がいた。
鈴音に習って、再び外に視線を向ける。
その先には、揺れる栗色の髪。
中庭の中で誰より強いオーラを放つのは、鳴海祥子だ。
男子生徒と二人で、ベンチに座って会話している。