「そういえば、雄平」
照れ隠しに、口を開く。
話題は、今日一日ずっとあたしの頭に居座っていた、あの人のこと。
「さっき鳴海先輩と話してたよね。あたし、よく覚えてなかったんだけど、確か同じ中学だよね」
一息に言うと、雄平は視線を宙に漂わせる。
これは、どう答えるか迷っているのか、それとも、ただ記憶を辿っているだけなのか、判断がつかなかった。
雄平が答えるまでのほんの数秒間、あたしは知らず知らず息をひそめる。
「ああ」
やがて雄平の目があたしの元へと戻ってくると、
「なんだ、声かけてくれればよかったのに」
心底そう思っているような口振りで、そう言った。
声をかけていたら、どうなっていたのだろう。
彼女の伊田杏奈です、と鳴海先輩に言ったのだろうか。
そして、鳴海先輩のことを何と言ってあたしに紹介したのだろうか。



