「我ながら、ほんとイイ男だなぁ。入学した時から目をつけてた女の子が、やっと手の届くところまでやって来たのに、押し倒さないんだから」
東郷先輩の言葉に苦笑いを浮かべると、心外だという風に眉を持ち上げる。
「嘘だと思ってる?だって俺、最初に会った時から、伊田ちゃんの名前知ってたでしょ」
「……確かに」
薄暗い廊下で初めて会ったあの日、東郷先輩はあたしの名前を呼んだ。
するとその言葉も、あながち嘘ではないのかもしれない。
「この状況、普通ヤられちゃうよ?感謝してよね」
口を尖らせる先輩に、一応は感謝の気持ちも込めて言う。
「あたし東郷先輩のこと、嫌いじゃないですよ」
すると東郷先輩は、よりいっそう不機嫌そうに目を細めた。
「殺し文句だね」



