杏奈から視線をはずしながら、曖昧にしか答えようがない。
「俺は、ちょっと、用事」
「そうなんだ」
廊下の突き当たりから西日が射し込んできて、廊下に俺と杏奈の影を伸ばしている。
「あ……」
杏奈が、何かに気付いたように小さく声を上げた。
驚いて顔を上げた拍子に、目が合う。
杏奈は、何とも言い難い表情で俺を見ていた。
「何……?」
恐る恐る尋ねると、杏奈は何やらつまらなさそうな顔をする。
「背」
「は?」
「だから、背」
焦れたようにそう言って、一歩、俺に近付いた。
頭の上に、手をかざす。
「伸びたね」



