「雄平……」
どうしてこんな時に、会ってしまう?
誰もいない、静まり返った廊下で顔を合わせてしまったら、気付かないふりもできない。
杏奈の顔を見ると、蘇ってしまう。
ざわざわと胸の内側で騒がしく、温かく優しくもあり、刺々しく激しい感情が。
恋なのかもしれない、感情が。
「今帰り?あたしは、委員会で……」
遠慮がちに言うなんて、杏奈らしくない。
夏休み前のやり取りが、杏奈の中でも尾を引いているのだろう。
俺も俺で、鳴海先輩と寝たことが引っかかり、まともに目を合わせることができない。
しかも、今の今まで鳴海先輩を探していた。
本来なら、後ろめたさを感じる必要などない。
けれど、わかっていても、心臓が縮んで冷や汗をかくのを止められない。



